資料集7


    産業社会学部決議 (2007年6月28日)

       「学園の民主化」を求める決議「願い」


               「願い」
 私達は一人の人間として貴方を見る時、同情に堪えません。
 貴方は朱雀の美しい廊下を歩きながら、衣笠にいる学費に苦しんでいる学生の存在を知ろうとはなされない。それが故に、貴方の退任慰労金の額に学生から反発が起きたことを貴方はさぞ不可思議なことだと思われたでしょう。
 貴方は学園発展のために自己の信頼を犠牲にした犠牲者であります。私達はそのことを人間としての貴方のために気の毒に思います。
 しかし貴方がかつて理事長でおられたころ、全学協議会で多くの学生たちがこれ以上の学費値上げを止めて欲しいと願う中、その声の重み受け止めていると言いながらも、議論を一方的に打ち切り、学費値上げを強行なされたことを考えるとき、私達はもはや貴方に同情していることはできな
いのです。
 貴方は今も変わっていません。名前だけは相談役であるけれど、それがかつての理事長と大差ないことを私達は考えざるを得ず、貴方が今再び学園の更なる発展の名の元に、私達に学費という痛みを押し付けようとしていることを認めざるを得ないのです。
 我々は勿論かつての貴方の責任を許しはしないけれどそれよりも、なお一層貴方が同じあやまちをくり返さないことを望みます。
 そのためには、私達は貴方が退任慰労金を速やかに返還することをのぞむのですが、貴方自身それを望まれぬとしても少なくとも一人の人間として、貴方の学園の学生達の声に耳をかたむけていただくことを希望するものです。
 「1951年京都大学同学会の人間天皇への公開質問状」によせて

 2007年6月28日    産業社会学部自治会


【説明】
  この決議文は「総長・理事長の退職慰労金倍額規定の撤回」と「学園の民主化」を求める決議「願い」となっている。この決議が素晴らしいのは、産業社会学部の学生947名が結集し、一名の反対や保留を出さず、全員一致でこの採決が採択されたことである。(注1)
  産業社会部自治会のこの決議は「願い」という表題をつけ、その最初の文言は「私たちは一人の人間として貴方を見るとき、同情に堪えません。」と書かれている。
  この文書の決議の書き出しの文言は、1951年京都大学に天皇陛下が来られたさいに、京大の学生自治会が天皇に対する公開質問状に使った言葉である。(注2)


注1:産業社会学部学生大会 特別決議
  6月28日の午後、産業社会学部の学生大会が開かれました。
   今年度は昨年の871人を上回り、過去10年で最多となる947人での成立となり
  ました。
   産社生の様々な声を集めた「議案書」や、36年ぶりとなる「産業社会学部自
  治会規約改正」などが参加者の圧倒的多数で採決されました。
   さらに、「総長・理事長の退任慰労金倍増規定の撤回」と「学園の民主化」を
  求める特別決議「願い」が、反対0人、保留0人、賛成947人で満場一致によ
   り、採決されました。


注2:京大天皇事件 学生の「公開質問状」ウィキペディア
     京都大学同学会は5ヵ条からなる「公開質問状」を作成し、天皇に渡すことを
  計画していたが拒否された。「私達は一個の人間として貴方を見る時、同情に
  耐えません」で始まるこの質問状は、当時学生であった中岡哲郎(のち大阪市
  立大学教授)の執筆によるもので、先述のように現実の社会矛盾が取り繕われ
  隠蔽されたなかで天皇が多額の公費により巡幸を行っていることを悲しむととも
  に、米軍占領下での再軍備や朝鮮戦争が進行していた当時の情勢を踏まえ、
  日本が戦争に巻き込まれそうになった時の対応などを問う内容であった。また
   「貴方が今又、単独講和と再軍備の日本でかつてと同じような戦争イデオロギ
   ーの一つの支柱としての役割を果たそうとしている」とあるように、天皇の戦争
  責任や政治利用というタブーにも言及していた。