資料集5


        産経新聞  (2002年4月17日   皆川豪志より)
産経新聞が小畑力人氏の力量をたたえている。

<―間近に迫った「全入時代」―>
「立命館にものすごいやり手がきたらしい」「全国の高校から一芸入試の受験生をスカウトしている」(注1)…。立命館のいう「入り口の改革」である入試改革が軌道に乗り始めた1990年代初頭、他大学の入試関係者は、この男の話題で持ちきりだったという。
 地元予備校から立命館に転職した現入試センター部長、小畑力人氏(55)のことである。急激に入試志願者を伸ばし始めた立命館に対するやっかみでもあった。「各大学の志願者数には隔年現象がある。前年伸びた大学は、翌年は敬遠されて下がり、前年下がった大学は上がる。右肩上がりで志願者を増やすには絶えず入試改革を行う必要があった。」小畑はそう振り返る。
 英、国などの二教科型をはじめ、得意科目や論文などを重視したりするタイプ、さらに一芸に秀でた学生を集める「文芸入試」や、高校時代のボランティア活動などを重視する「AO(自己推薦)入試」…。現在、その入試方法は十数タイプにものぼり、地方試験などを含めると同じ学部を数回以上、受験することもできる。
 結果的には、今や当たり前のように、多くの大学が「立命館方式」を取り入れるようになった。中には、試験科目を一教科にまで減らしたり、理系なのに数学を課さなかったりする行き過ぎた“ユニーク入試”まで登場することになった。ある大手予備校の幹部は、立命館の先駆的な改革を認めながらもこう指摘する。「多彩な人材を集めるという趣旨が、単なる受験生集めにすりかわってしまった。大学生の学力低下に与えた影響も大きい」
 大学にとって受験料収入はばかにならない。立命館の場合、1回あたり3万5千円で約十万人が受験するため年間30億円規模の収入になる。
 小畑は「受験生の数は収入以上に大事な問題。量的確保がなければ質的なレベルアップを図ることはできない」とした上で、学力低下の批判は的外れだと反論する。「確かに一部の大学にはあてはまるが、それ以上に文学科学省の『ゆとり教育』の弊害のほうが大きい。必須カリキュラムが年々減らされ、大学受験に必要な科目を高校で勉強していない子供が急増している」
 大学の門戸が広くなりすぎたという側面もある。現在の18歳人口は、ピーク時の昭和40年代に比べて4割減の150万人前後。進学率が上昇したとはいえ、それ以上に大学の数が増えており、数字上は平成21(2009)年度には「大学全入時代」がやってくる。 すでに4年生私大の30%、短大の55%が定員割れを起こしており、短大の中には募集停止に踏み切る所も出始めた。
「入り口の改革」は大学の存立そのものにかかわってくる重大な問題でもあるのだ。
「近い将来、大学入試は『選抜型』と、一定水準さえあればいい『学力チェック型』、形だけの『無試験型』の三タイプに分かれるはず。どの大学に分類されるかは、現在の改革意欲にかかってくる」。小畑の持論である。
 立命館ではこの春から私大では異例の「4教科型」入試を加えた。「科目減らしで受験生を集めている」という批判に応えるのと同時に、幅広い知識に秀でた受験生に門戸を広げるためだ。小畑は「狙いは多様な学生を集めること。だから試験方式にこだわる必要はなく、1人でも多くの受験生が挑戦してくれればいい」。
「量的確保」は、立命館を真の意味での“全国区型大学”に変えることにもつながった。地方入試の拡大が進んだ4(1992)年以降、近畿圏とそれ以外の志願者数の割合は逆転。現在では、全国の大手私大で最も「1人暮らし率」が高い大学という“たくましい”評価も得るようになったという。(後略)
注1:代表例は、おしんの小林綾子、歌手の 倉木麻衣